girl girl girl





 雲一つない、すっきりと晴れたある日のこと。
 小柄な少女が、ウェルテスの街路をスキップ混じりの軽い足取りで歩いていた。
 豊かな亜麻色の髪を綺麗に結い上げ、その上には薄桃色の大きな花の髪飾り。
 通り過ぎる街の住民に挨拶する声ははきはきしていて、幼さの欠片はなく、伸びやかな張りがある。ご機嫌な少女は、視線の先に見慣れた姿を発見した。問答無用で、大声を上げる。
「あー!セネル君っ!」
 肩を弾ませ、くるりと振り返ったのは、背中に一歳くらいの子供を負ぶった銀髪の青年だ。
「ハリエット、声が大きい…。ようやく寝てくれたとこなのに、また起きちゃうだろ」
「やあねぇ。セネル君てば、その言い方パパそっくり」
 眉間にしわを寄せてぼやいたセネルに、ハリエットは胸を張って、けろりと答えた。
 ウィルには悪いが、それはあんまり嬉しくない。一瞬、傷付いたような表情になって、ハリエットの頭を小突いた。しかし、一方のハリエットは、そんなセネルの抗議に耳を傾けるつもりは一切ないらしい。セネルの背に向かって手を伸ばす。
「おはよう、ルゥ♪今日もお母さんに似て美人さんね♪パパに似なくて良かったねー」
「おい、ハリエット…」
 背中の子供を腕にゲットし、幼児の淡い空の色の瞳を覗きながら言うハリエットに、セネルはがっくり肩を落とした。そりゃあ彼の娘は、空色の瞳の色を除いて、金色の髪も顔立ちもお母さんの方に似ていたけれど。
「シャーリィとルセは?」
「シャーリィがミュゼットさんのとこに出掛けたから、ルセも連れてったけど」
 顔立ちもそっくり母親似なこの双子の女の子は、ルゥとルセと言う。街の仕事をする時でも、セネルもシャーリィも子供達を連れているので、すっかりウェルテスのアイドルだ。
「お、話したそばから。もう終わったみたいだな」
 背伸びをして遠くを見て、セネルは今ハリエットが来た道の先を指差す。並んで来るのは、金色の髪と亜麻色の髪の娘二人だ。
「あ、ホントだ!シャーリィ!ノーマ!」
「お〜、ハッちにセネセネじゃーん!」
 相変わらず凹凸の少ない身体のノーマが、にやりと笑って片手を上げる。隣のシャーリィも、柔和な顔を綻ばせる。腕の中の一歳児は元気にきゃっきゃと手を上げていた。
「おはよう、ハティ。ルゥの面倒見てくれてたのね、ありがとう」
「だって、赤ちゃん可愛いんだもんっ。そういえばノーマ、久し振りだね。いつ帰ったの?」
「昨日にはもう帰って来てたよ。家に直行しちゃったけどね。もー、疲れて早く寝たくって」
「いいお宝あった?」
「ふっふーん♪あとで、ウィルっちいない時に見せたげるね」
 今でも現役トレジャーハンターのノーマは、ウィルに頼まれた遺跡調査の傍ら、こっそり宝探しすることも欠かさない。ハリエットと、満面の笑顔を交わす。
「ハッち、今日予定は?なかったら、一緒にピクニック行かん?」
「行く行く、勿論っ!シャーリィは?」
 もうほとんど同じ目線のハリエットに、シャーリィは海色の瞳を細めて、笑って答える。
「うん、私も勿論っ。ルゥとルセも連れて行くから、ハティも面倒見るの手伝ってくれる?」
「当ったり前よ!」
 と、ルゥを抱っこしたハティは快く請け負った。実際のところ、ハリエットはとても面倒見が良く、街の子供の遊び相手もよくこなしてくれていた。
「しっかし、ルゥとルセは可愛いよね〜。あたしも子供、欲しいなぁ」
「なに言ってんのよ。ノーマは割とモテるでしょ?」
 凹凸が全然ない割には、とハリエットが笑って言うと、シャーリィは吹き出すのを堪えて肩を震わせ、ノーマはハリエットの頭をぽかりと叩くと、両腕を腰に当てて胸を張った。
「だってあたし、同年代にはキョーミないし。男は年上に限るわよ!」
 どきっぱり、と声高らかに宣言するノーマ。実際、明るい彼女を想う相手はいないでもないらしいが、全てこの調子で軽くあしらわれているらしい。
「ふーん、勿体無いの。ツバつけといた方がいいのも、中にはいるわよ、絶対。ま、ノーマがいいなら、別にいいけど。
 じゃあ、各自お弁当作って一時間後にシャーリィの家に集合ってことで!」
 はーい、と仲良く声を揃える女三人を遠巻きに見て、すっかり忘れ去られたセネルは、しょんぼりと寂しそうに苦笑いすると、仕事とウィルの待っているレイナード邸に向かってくるりと身を翻した。









 女の子が三人寄れば、かしましい、ってコトで。
 ペーパーに載っけた文章でした。

 この頃、2世ものに凝ってましたね(笑)
 他のメンバーがアレなので、パーティ内で生まれる最初の2世がセネシャリっぽい気がします。
 双子の娘の名前は、古刻語で考えて、それがあんまり可愛くないので愛称にしました(笑)安直〜。
 シャーリィはきっとセネ太郎を名前で呼んでいるでしょう。じゃなかったら犯罪だもの(笑)
2006.8.28